求める声を聞けばはっと思わせられもするし、恐ろしく情けないことの多くなったのは堪えられぬことであると、涙の中で姉妹《きょうだい》が語り合っているうちにその年も暮れるのであった。
 雪や霰《あられ》の多いころはどこでもはげしくなる風の音も、今はじめて寂しい恐ろしい山住みをする身になったかのごとく思って宇治の姫君たちは聞いていた。女房らが話の中で、
「いよいよ年が変わりますよ。心細い悲しい生活が改まるような春の来ることが待たれますよ」
 などと言っているのが聞こえる。何かに希望をつないでいるらしい。そんな春は絶対にないはずであると姫君たちは思っていた。宮が時々念仏におこもりになったために、向かいの山寺に人の出はいりすることもあったのであるが、阿闍梨《あじゃり》も音問《おとずれ》の使いはおりおり送っても、宮のおいでにならぬ山荘へ彼自身は来てもかいのないこととして顔を見せない。時のたつにつれて山荘の人の目にはいる人影は少なくなるばかりであった。気にとまらなかった村民などさえもたまさかに訪《たず》ねてくれる時はうれしく思うようになった。寒い日に向かうことであるから燃料の枝とか、木の実とかを拾い集
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