々しくばかりなっておしまいになりますのに、あなた様の御好意のかたじけなさは、私ども風情《ふぜい》のつまらぬ者さえも驚きの目をみはるばかりでございます。でございますから、お若い女王様がたも常に感激はしておいでになりながらも、そのとおりにお話しあそばすことはおできにならないのでございましょう」
 控えめにせず物なれたふうに言い続けることに反感は起こりながらも、この人の田舎《いなか》風でなく上流の女房生活をしたらしい品のよい声《こわ》づかいに薫は感心して、
「取りつきようもない皆さんばかりでしたのに、あなたが出て来てくださいまして、私の誠心誠意をくんでいてくださる方を得ましたことは、私の大きい幸福です」
 こう御簾に身を寄せて言っている薫を、几帳《きちょう》の間からのぞいて見ると、曙《あけぼの》の光でようやく物の色がわかる時間であったから、簡単な服装をわざわざして来たらしい狩衣《かりぎぬ》姿の、夜露に濡《ぬ》れたのもわかったし、またこの世界のものでないような芳香もそこには漂っていることにも気づかれた。この老女はどうしたのか泣きだした。
「あまり出すぎたことをしてお気持ちを悪くしましてはと存じ
前へ 次へ
全49ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング