きったものでしょうから、こうした男の志の深さ浅さも御明察くだすったらうれしいことだろうと私は思います。世間並みの一時的な感情で御交際を求める男と同じように私を御覧になるのではありませんか。私がどんな誘惑にも打ち勝って来ている男であることは、すでに今までにお耳へはいっていることかとも思われます。独身生活を続けております私が求める友情をお許しくだすって、私もまた寂しいあなた様のお心を慰める友になりえて親密なおつきあいができましたらどんなにうれしいかと思われます」
などと薫の多く言うのに対して、大姫君は返辞がしにくくなって困っているところへ、起こしにやった老女が来たために、応答をそれに譲った。その女は出すぎた物言いをするのであった。
「まあもったいない、失礼なお席でございますこと。なぜ御簾《みす》の中へお席を設けませんでしたでしょう。若い人たちというものは人様の見分けができませんでねえ」
などと老人らしい声で言っていることにも女王たちはきまり悪さを覚えていた。
「この世においでになる人の数にもおあたりになりませんようなお暮らしをあそばして、当然おいでにならなければならない方でさえも段々遠
前へ
次へ
全49ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング