ぼう》も必ず美しいであろうと薫は心の惹《ひ》かれるのを覚えた。こんなことがよくあって、新女御と薫の侍従は親しくなっていた。反感を引くようにまでは怨《うら》みかけたりはしなかったが、何かのおりには失恋の歎《なげ》きをかすめて言う薫を、女御のほうではどう思ったか知らない。
四月に院の第二皇女がお生まれになった。きわめてはなやかなことの現われてきたのではないが、院のお心持ちを尊重して、右大臣を初めとして産養《うぶやしない》を奉る人が多かった。尚侍はお抱きした手から離せぬようにお愛し申し上げていたが、院から早くまいるようにという御催促がしきりにあるので、五十日目ぐらいに、新女御は宮をおつれ申して院へまいった。院はただお一人の内親王のほかには御子を持たせられなかったのであるから、珍しく美しい少皇女をお得になったことで非常な御満足をあそばされた。
以前よりもいっそう御|寵愛《ちょうあい》がまさって、院のこの御殿においでになることの多くなったのを、叔母《おば》の女御付きの女房たちなどは、こんな目にあわないではならなかったろうかなどと思ってねたんだ。叔母と姪《めい》との二人の女御《にょご》の間には
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