をお悲しみになりますことはごもっとも至極なことですが、しかしそんなにまで深くお歎《なげ》きになってはよろしくないでしょう。この世のことはみな前生からのきまっている因縁の現われですから、そう思えばさすがに際限もなく悲しみばかりの続くものでないことがわかると思いますが」
などと大将は慰めていた。この宮は以前|噂《うわさ》に聞いていたよりも優美な女性らしいが、お気の毒にも良人《おっと》にお別れになった悲しみのほかに、世間から不幸な人におなりになったことを憐《あわ》れまれるのを苦しく思っておいでになるのであろうと思う同情の念がいつかその方を恋しく思う心に変わってゆくのをみずから認めるようになった大将は熱心に宮の御近状などを御息所に尋ねていた。御|容貌《きりょう》はそうよくはおありでならないであろうが、醜くて気の毒な気持ちのする程度でさえなければ、外見だけのことでその人がいやになるようなことがあったり、ほかの人に心を移すようなことは自分にできるはずがない、そんな恥知らずなことは自分の趣味でない、性格のよしあしで尊重すべき女と、そうでない女は別《わ》けらるべきであるなどと思っていた。
「もうお心
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