はもり》の神の許しありきと
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まだ御簾《みす》の隔てをお除きくださらないのが遺憾です」
と言った。一段高くなった室《へや》の長押《なげし》へ外から寄りかかっているのである。
「柔らかい形をしていらっしゃる時に、また別な美しさがおありになりますよ」
と女房らはささやき合うのであった。今まで話していた少将という女房を取り次ぎにして宮はお返辞をおさせになった。
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「柏木に葉守の神は坐《いま》すとも人|馴《な》らすべき宿の梢《こずゑ》か
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突然にそうしたお恨みをお言いかけになりますことで御好意が疑われます」
と伝えられたお言葉に道理があると思って大将は微笑した。その時に御息所がいざって来る気配《けはい》がしたので大将は少しいずまいを直した。
「世の中のことをあまりに悲しく思い過ぐしますせいですか、身体《からだ》のぐあいが悪うございまして、ぼけたようにもなって暮らしておりますが、こうしてたびたびの御親切な御訪問に力づけられまして出てまいりました」
と御息所は言ったが、言葉どおりに病気らしく感じられた。
「故人
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