楽者も石清水《いわしみず》や賀茂《かも》の臨時祭に使われる専門家がより整えられたのであるが、ほかから二人加えられたのは近衛府《このえふ》の中で音楽の上手《じょうず》として有名になっている人であった。また神楽のほうを受け持つ人も多数に行った。宮中、院、東宮の殿上役人が皆御命令によって供奉《ぐぶ》の中にいるのも無数にあった。華奢《かしゃ》を尽くした高官たちの馬、鞍《くら》、馬添い侍、随身、小侍の服装までもきらびやかな行列であった。院の御車《みくるま》には紫夫人と女御をいっしょに乗せておいでになって、次の車には明石夫人とその母の尼とが目だたぬふうに乗っていた。それには古い知り合いの女御の乳母《めのと》が陪乗したのである。女房たちの車は夫人付きの者のが五台、女御のが五台、明石夫人に属したのが三台で、それぞれに違った派手《はで》な味のある飾りと服装が人目に立った。明石の尼君がいっしょに来たのは、
「今度の参詣に尼君を優遇して同伴しよう。老人の心に満足ができるほどにして」
 と院がお言い出しになったのであって、はじめ明石夫人は、
「今度は院と女王様が主になっての御参詣なんですから、あなたなどが混じ
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