《たず》ねに来るついでにここへも来て、あなたと御交際の道を開きたいように言っていましたから、お許しになって話してごらんなさい。善良な性質の人ですよ。まだ若々しくてあなたの遊び相手もできそうですよ」
 とお語りになった。
「恥ずかしいでしょうね。どんなお話をすればいいのでしょうね」
 とおおように宮は言っておられる。
「人にする返辞は先方の話次第で出てくるものです。ただ好意を持ってお逢いにならないではいけませんよ」
 院はこまごまと御注意をされた。院は御両妻の間が平和であるように祈っておいでになるのである。あまりにたあいのない子供らしさを紫の女王に発見されることは、御自身としても恥ずかしいことにお思いになるのであるが、夫人が望んでいることをとめるのもよろしくないとお考えになったのである。
 紫の女王は内親王である良人《おっと》の一人の妻の所へ伺候することになった自分を憐《あわれ》んだ。二十年|同棲《どうせい》した自分より上の夫人は六条院にあってはならないのであるが、少女時代から養われて来たために、自分は軽侮してよいものと見られて、良人は高貴な新妻をお迎えしたものであろうと思うと寂しかった
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