。つまらない物ですが女房にでもお与えください。
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とおおように書かれてあった。源氏はそれの来ているのを見て気まずく思って例のよけいなことをする人だと顔が赤くなった。
「これは前代の遺物のような人ですよ。こんなみじめな人は引き込んだままにしているほうがいいのに、おりおりこうして恥をかきに来られるのだ」
と言って、また、
「しかし返事はしておあげなさい。侮辱されたと思うでしょう。親王さんが御秘蔵になすったお嬢さんだと思うと、軽蔑《けいべつ》してしまうことのできない、哀れな気のする人ですよ」
とも言うのであった。小袿の袖の所にいつも変わらぬ末摘花の歌が置いてあった。
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わが身こそうらみられけれ唐《から》ごろも君が袂《たもと》に馴《な》れずと思へば
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字は昔もまずい人であったが、小さく縮かんだものになって、紙へ強く押しつけるように書かれてあるのであった。源氏は不快ではあったが、また滑稽《こっけい》にも思われて破顔していた。
「どんな恰好《かっこう》をしてこの歌を詠《よ》んだろう、昔の気力だけもなくなっているのだか
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