ら、大騒ぎだったろう」
 とおかしがっていた。
「この返事は忙しくても私がする」
 と源氏は言って、
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不思議な、常人の思い寄らないようなことはやはりなさらないでもいいことだったのですよ。
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 と反感を見せて書いた。また、

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からごろもまた唐衣からごろも返す返すも唐衣なる
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 と書いて、まじめ顔で、
「あの人が好きな言葉なのですから、こう作ったのです」
 こんなことを言って玉鬘に見せた。姫君は派手《はで》に笑いながらも、
「お気の毒でございます。嘲弄《ちょうろう》をなさるようになるではございませんか」
 と困ったように言っていた。こんな戯れも源氏はするのである。
 内大臣は重々しくふるまうのが好きで、裳着の腰結《こしゆ》い役を引き受けたにしても、定刻より早く出掛けるようなことをしないはずの人であるが、玉鬘のことを聞いた時から、一刻も早く逢いたいという父の愛が動いてとまらぬ気持ちから、今日は早く出て来た。行き届いた上にも行き届かせての祝い日の設けが六条院にできていた。よくよくの好意がなければこ
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