でおいでになった。式部卿《しきぶきょう》の宮がお薨《かく》れになって何ほどの時がたっているのでもないが、もう宮のうちには荒れた色が漂っていて、しんみりとした空気があった。女五の宮が御対面あそばして源氏にいろいろなお話があった。老女らしい御様子で咳《せき》が多くお言葉に混じるのである。姉君ではあるが太政大臣の未亡人の宮はもっと若く、美しいところを今もお持ちになるが、これはまったく老人らしくて、女性に遠い気のするほどこちこちしたものごしでおありになるのも不思議である。
「院の陛下がお崩《かく》れになってからは、心細いものに私はなって、年のせいからも泣かれる日が多いところへ、またこの宮が私を置いて行っておしまいになったので、もうあるかないかに生きているにすぎない私を訪《たず》ねてくだすったことで、私は不幸だと思ったことももう忘れてしまいそうですよ」
と宮はお言いになった。ずいぶん老人《としより》めいておしまいになったと思いながらも源氏は畏《かしこ》まって申し上げた。
「院がお崩《かく》れになりまして以来、すべてのことが同じこの世のことと思われませんような変わり方で、思いがけぬ所罰も受けまし
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