源氏物語
薄雲
紫式部
與謝野晶子訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)夕《ゆふべ》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)見|馴《な》れた
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−
[#地から3字上げ]さくら散る春の夕《ゆふべ》のうすぐもの涙とな
[#地から3字上げ]りて落つる心地《ここち》に (晶子)
冬になって来て川沿いの家にいる人は心細い思いをすることが多く、気の落ち着くこともない日の続くのを、源氏も見かねて、
「これではたまらないだろう、私の言っている近い家へ引っ越す決心をなさい」
と勧めるのであったが、「宿変へて待つにも見えずなりぬればつらき所の多くもあるかな」という歌のように、恋人の冷淡に思われることも地理的に斟酌《しんしゃく》をしなければならないと、しいて解釈してみずから慰めることなどもできなくなって、男の心を顕《あら》わに見なければならないことは苦痛であろうと明石《あかし》は躊躇《ちゅうちょ》をしていた。
「あなたがいやなら姫君だけでもそうさせてはどう。こうし
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