ておくことは将来のためにどうかと思う。私はこの子の運命に予期していることがあるのだから、その暁を思うともったいない。西の対《たい》の人が姫君のことを知っていて、非常に見たがっているのです。しばらく、あの人に預けて、袴着《はかまぎ》の式なども公然二条の院でさせたいと私は思う」
 源氏はねんごろにこう言うのであったが、源氏がそう計らおうとするのでないかとは、明石が以前から想像していたことであったから、この言葉を聞くとはっと胸がとどろいた。
「よいお母様の子にしていただきましても、ほんとうのことは世間が知っていまして、何かと噂《うわさ》が立ちましては、ただ今の御親切がかえって悪い結果にならないでしょうか」
 手放しがたいように女は思うふうである。
「あなたが賛成しないのはもっともだけれど、継母の点で不安がったりはしないでおおきなさい。あの人は私の所へ来てずいぶん長くなるのだが、こんなかわいい者のできないのを寂しがってね、前斎宮《ぜんさいぐう》などは幾つも年が違っていない方だけれど、娘として世話をすることに楽しみを見いだしているようなわけだから、ましてこんな無邪気な人にはどれほど深い愛を持つか
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