も相手は、入道が源氏に関係のあることをにおわしたことで気味悪く思って、私慾《しよく》をそれ以上たくましくはしかねていた。それからのち、入道家から金を多く受け取って大井の山荘は修繕されていった。そんなことは源氏の想像しないことであったから、上京をしたがらない理由は何にあるかと怪しんでは、姫君がそのまま田舎に育てられていくことによって、のちの歴史にも不名誉な話が残るであろうと源氏は歎息《たんそく》されるのであったが、大井の山荘ができ上がってから、はじめて昔の母の祖父の山荘のあったことを思い出して、そこを家にして上京するつもりであると明石から知らせて来た。東の院へ迎えて住ませようとしたことに同意しなかったのは、そんな考えであったのかと源氏は合点した。聡明《そうめい》なしかただとも思ったのであった。惟光《これみつ》が源氏の隠し事に関係しないことはなくて、明石の上京の件についても源氏はこの人にまず打ち明けて、さっそく大井へ山荘を見にやり、源氏のほうで用意しておくことは皆させた。
「ながめのよい所でございまして、やはりまた海岸のような気のされる所もございます」
 と惟光は報告した。そうした山荘の風
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