続きを見ているのかもしれません。なお幾年もそうした運命の中にあなたがお置かれになることはおそらくなかろうと思われます。それを考えますと、罪の深い私は何時をはてともなくこの海の国にさすらえていなければならないことかと思われます。
[#ここから2字下げ]
うきめかる伊勢をの海人《あま》を思ひやれもしほ垂《た》るてふ須磨の浦にて
[#ここから1字下げ]
世の中はどうなるのでしょう。不安な思いばかりがいたされます。
[#ここから2字下げ]
伊勢島や潮干《しほひ》のかたにあさりても言ふかひなきはわが身なりけり
[#ここで字下げ終わり]
などという長いものである。源氏の手紙に衝動を受けた御息所はあとへあとへと書き続《つ》いで、白い支那《しな》の紙四、五枚を巻き続けてあった。書風も美しかった。愛していた人であったが、その人の過失的な行為を、同情の欠けた心で見て恨んだりしたことから、御息所も恋をなげうって遠い国へ行ってしまったのであると思うと、源氏は今も心苦しくて、済まない目にあわせた人として御息所を思っているのである。そんな所へ情のある手紙が来たのであったから、使いまでも恋人のゆかりの親し
前へ
次へ
全59ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング