で今年から御所の侍童に出る八、九歳の少年でおもしろく笙《しょう》の笛を吹いたりする子を源氏はかわいがっていた。これは四の君が生んだ次男である。よい背景を持っていて世間から大事に扱われている子であった。才があって顔も美しいのである。主客が酔いを催したころにこの子が「高砂《たかさご》」を歌い出した。非常に愛らしい。(「高砂の尾上《をのへ》に立てる白玉椿《しらたまつばき》、それもがと、ましもがと、今朝《けさ》咲いたる初花に逢《あ》はましものを云々《うんぬん》」という歌詞である)源氏は服を一枚脱いで与えた。平生よりも打ち解けたふうの源氏はことさらにまた美しいのであった。着ている直衣《のうし》も単衣《ひとえ》も薄物であったから、きれいな肌《はだ》の色が透いて見えた。老いた博士たちは遠くからながめて源氏の美に涙を流していた。「逢はましものを小百合葉《さゆりば》の」という高砂の歌の終わりのところになって、中将は杯を源氏に勧めた。
[#ここから2字下げ]
それもがと今朝《けさ》開けたる初花に劣らぬ君がにほひをぞ見る
[#ここで字下げ終わり]
と乾杯の辞を述べた。源氏は微笑をしながら杯を取った。
前へ
次へ
全66ページ中58ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング