である、三位中将はいろいろな詩集を持って二条の院へ遊びに来た。源氏も自家の図書室の中の、平生使わない棚《たな》の本の中から珍しい詩集を選《え》り出して来て、詩人たちを目だつようにはせずに、しかもおおぜい呼んで左右に人を分けて、よい賭物《かけもの》を出して韻ふたぎに勝負をつけようとした。隠した韻字をあてはめていくうちに、むずかしい字がたくさん出てきて、経験の多い博士《はかせ》なども困った顔をする場合に、時々源氏が注意を与えることがよくあてはまるのである。非常な博識であった。
「どうしてこんなに何もかもがおできになるのだろう。やはり前生《ぜんしょう》の因に特別なもののある方に違いない」
などと学者たちがほめていた。とうとう右のほうが負けになった。それから二日ほどして三位中将が負けぶるまいをした。たいそうにはしないで雅趣のある檜破子《ひわりご》弁当が出て、勝ち方に出す賭物《かけもの》も多く持参したのである。今日も文士が多く招待されていて皆席上で詩を作った。階前の薔薇《ばら》の花が少し咲きかけた初夏の庭のながめには濃厚な春秋の色彩以上のものがあった。自然な気分の多い楽しい会であった。中将の子
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