も美しい子である、どんな身分の人なのであろう、あの子を手もとに迎えて逢《あ》いがたい人の恋しさが慰められるものならぜひそうしたいと源氏は深く思ったのである。
寺で皆が寝床についていると、僧都の弟子《でし》が訪問して来て、惟光《これみつ》に逢いたいと申し入れた。狭い場所であったから惟光へ言う事が源氏にもよく聞こえた。
「手前どもの坊の奥の寺へおいでになりましたことを人が申しますのでただ今承知いたしました。すぐに伺うべきでございますが、私がこの山におりますことを御承知のあなた様が素通りをあそばしたのは、何かお気に入らないことがあるかと御遠慮をする心もございます。御宿泊の設けも行き届きませんでも当坊でさせていただきたいものでございます」
と言うのが使いの伝える僧都の挨拶だった。
「今月の十幾日ごろから私は瘧病《わらわやみ》にかかっておりましたが、たびたびの発作で堪えられなくなりまして、人の勧めどおりに山へ参ってみましたが、もし効験《ききめ》が見えませんでした時には一人の僧の不名誉になることですから、隠れて来ておりました。そちらへも後刻伺うつもりです」
と源氏は惟光に言わせた。それから間
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