の近くのほうへ行って寝ます。暗いなあ」
子供は燈心を掻《か》き立てたりするものらしかった。女は襖子の所からすぐ斜《すじか》いにあたる辺で寝ているらしい。
「中将はどこへ行ったの。今夜は人がそばにいてくれないと何だか心細い気がする」
低い下の室のほうから、女房が、
「あの人ちょうどお湯にはいりに参りまして、すぐ参ると申しました」
と言っていた。源氏はその女房たちも皆寝静まったころに、掛鉄《かけがね》をはずして引いてみると襖子はさっとあいた。向こう側には掛鉄がなかったわけである。そのきわに几帳《きちょう》が立ててあった。ほのかな灯《ひ》の明りで衣服箱などがごたごたと置かれてあるのが見える。源氏はその中を分けるようにして歩いて行った。
小さな形で女が一人寝ていた。やましく思いながら顔を掩《おお》うた着物を源氏が手で引きのけるまで女は、さっき呼んだ女房の中将が来たのだと思っていた。
「あなたが中将を呼んでいらっしゃったから、私の思いが通じたのだと思って」
と源氏の宰相中将《さいしょうのちゅうじょう》は言いかけたが、女は恐ろしがって、夢に襲われているようなふうである。「や」と言うつもり
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