本の婦人の実力がまだまだ選挙権を要求する程度に達していないのはいうまでもないが、さりとて私は日本の教育ある中年以下の婦人たちが全く政治上に注意を向けていないとは思わない。一般婦人はなお男子に対して一種の奴隷たるに甘んじているほど無智無感覚であるにしても、教育ある婦人で殊に選挙権ある男子の家庭にある婦人たちは時節柄その見聞に由っても政治上の興味を誘《そそ》られることがないとは限らない。まして世間に婦人の自覚が叫ばれて以来四、五年を経ているから、鈍感な私と違って、疾《と》くに政治の改造までに個性の自由を延長して考え、政界の腐敗に対して公憤を禁《とど》めかねている真成の新しい女たちが其処此処《そこここ》の家庭に人知れず分布されているであろうとも想像されるのである。(私は或階級の自堕落な女が昔から行っている乱行に類似したような放蕩《ほうとう》を敢《あえ》てして、個性の権威を自覚した女、新生活を建てた女と自負する一部の婦人たちに、英仏の優秀な急進派婦人の光栄である「新しい女」の称を下した批評家の悪戯を不快に思っている。)
*
私はそういう日本の政治その他の近状に公憤を抱《いだ
前へ
次へ
全25ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング