めたこともあった。

       *

 しかし人知れず久しい内省に耽《ふけ》った後で、私は女性の位地がこんなにまで低落したのは、その原因を男子の横暴にのみ帰しがたいことを知った。女性の頭脳は遠い昔において或進化の途中に低徊《ていかい》したまま今日に到った観がある。私は女性が本質的に男子に比して劣弱なものであるとは思わない、しばしば天才婦人の現われるという事実が女性もまた男子と対等に進化し得られる素質を備えていることを暗示しているのであるが、さはいえ古今の一般女子を通じてその直観力の浅さ、その理性の鈍さ、その意志の弱さを思えば、とても男子の対等な伴侶となることの出来ないのは勿論、男子の足手まといとなって悲惨な屈従の生を送らねばならないのは当然女子自身の受くべき応報であった。私は微力を測らずして一躍男子の圧抑から脱《のが》れようとする痩《やせ》我慢を恥じねばならなかった。私は瞭然《はっきり》と女性の蒼白《そうはく》な裸体を見ることが出来た。

       *

 私は女性の位地を高めようとするには、女性が互に現在の自己の暗愚劣弱を徹底して自覚することがその第一歩であると確信するに到っ
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