階級闘争の彼方へ
与謝野晶子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)均霑《きんてん》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)腸|窒扶斯《チフス》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地より1字上げ]
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人類が連帯責任の中に協力して文化主義の生活を建設し、その生活の福祉に均霑《きんてん》することが、人生の最高唯一の理想であると私は信じています。文化生活が或程度の成熟期に入れば、そこには個人の能力に適する正当な社会的分業の生活があるばかりで、只今のように、同じ人類の内に甲と乙とで利害を異にし、甲の幸福のためには乙の幸福を犠牲とせねばならず、従って甲と乙とはその境遇に由って人格価値に優劣を分ち、生活の機会と享楽とに差等を生じる、いわゆる階級思想の如きものは、全く一掃されてしまうでしょう。
正当な社会的分業ということは、一切の人類が心的及び体的の実力を以て、文化生活の維持と増進とに必要な労作を分担することです。この労作には精神的のものもあり、物質的のものもありますが、前者が高等な労作であり、後者が劣等な労
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