であって、工場や会社の労働者のように集団的行動を為《な》しがたい者です。労働者は工場労働者ばかりと限らず、私たちと同じような単独無勢力の労働者の方が社会には多いのです。こういう労働者は大挙結束して資本家に迫るだけの威力を持たないのですから、工場労働者が賃銀値上の運動に成功する日にも、依然として不当に少く支払われて、それに我慢していねばならない上に、更に間接に工場労働者の賃銀値上が影響して生活の必需品に対し、一層不当に多く支払わねばならないという二重三重の苦境に立たせられます。同じ労働階級でありながら、その中に、更に特権階級と無特権階級とが併存するという事は、決して正義に合したことだといわれません。今日同盟罷工に成功しつつある工場労働者の中の聡明な人たちがもしこの事に想い到るならば、その自家の行為が同じ階級の中の大多数者の生活を一層困難に導く結果を見て、意外の感に打たれるのみならず、その行為が資本家の行為と纔《わず》かに五十歩百歩の差を以て利己的行為たるを免れないことに赤面せねばならないでしょう。
*
しかし階級闘争が賃銀の値上を越えて、その本体たる利潤の争奪戦にまで
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