、隠然と多大の後援を寄せることになります。また資本家も官憲も姑息な圧制手段や温情的方法を以て一時を糊塗《こと》することが出来なくなりました。殊に唯今の政府は農民党たる政友会の政府であり、労働者の当の敵たる資本家は固《もと》より都市の商工業者ですから、同じ資本家の手先になっている政府とはいえ、憲政会の政府よりは資本家に私《わたくし》する所が露骨でないという事情もあり、また近来の官憲の中の少壮分子は不徹底ながらも民主思想を理解し、世界の労働問題に一隻眼を開いている所から、資本家の極端な利己心に憤慨し、労働者の境遇に同情するという立派な理由もあって、最近の同盟罷工が概《おおむ》ね官憲に由って善意に保護されているのを見ると、これしきの事にも我国においては空前の善政だという感謝の心が湧《わ》かずにおられません。
 
       *

 私は貧富の階級闘争を以て到底一度は避けがたいものだと思っています。それは無産階級にある私たちが、一面には労働者として余りに不当に少く支払われ、一面には消費者として余りに不当に多く支払わされているという日日の経済事情がこれを促進せずに置きません。この事は一に少数の
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