されている」と述べた所の我国にも発生して来ました。最近において東京に起った活版職工その他の幾多の同盟罷工は、この現象の外に何を語るでしょうか。
*
武力に訴える人類間の闘争は独墺の屈服に由って一段落がついたようですが、望む所の平和はまだ容易にその曙光《しょこう》を示しません。今や武力の闘争に代る貧富の階級闘争が戦前よりも幾多の勢力を以て我国にも押寄せて来ました。
これまでの労働者が企てた階級闘争は本能的、盲目的のものでした。反射的、ヒステリイ的のものでした。彼らは敵についても、味方についても、その実力を知らず、その要求が一時的の不平に発し、その行動が個人的に偏して、多数の利害を念とする協同作用が欠けていましたから、資本家の慈善主義に感激したり、警察官や軍隊の威圧に挫折したりして、たわいもない結果に終る場合が多かったようですが、最近の同盟罷工には、労働者に知識があり、自制があって、その要求が或程度の合理的基礎を備え、その行動が自制と組織とを持つようになりました。これは労働者の非常な進歩です。こういう聡明なかつ道徳的な労働運動に対しては、第一に一般社会がこれに同情して
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