り女の友と遊ぶのを悦《よろこ》んで居ます。綺麗だから欲《ほ》しいと云ふものですから、私は叱ることもようせずに、花樹《はなき》や瑞樹《みづき》に遣るやうな小切れを光《ひかる》にも分けて与へてあるのです。色糸《いろいと》なども持つて居ます。平生《ふだん》はそれを出して遊ばうとはしませんが、玩具《おもちや》棚の一番下にある黒い箱がそれです。女の友達の来て居る時に刺繍《ぬひ》を拵《こしら》へて遣つたり、人形を作つたりしてやることがあるのです。女も交《まじ》つて遊ぶ学校へ入つて居たなら、光《ひかる》も運動場の傍観者ではなかつたかも知れません。このことは性の別がはつきりと意識される日に直ることであらうと思ひます。光《ひかる》はまた男性的でないのではありません。あの大様《おほやう》な生々《いき/\》とした線で描《か》く絵を見て下さい、光《ひかる》の書いて居る日記を見て下さい、光《ひかる》は母親の羨《うらや》んで好《い》い男性です。私が光《ひかる》に危《あやぶ》みますのは異性に最も近い所で開く性の目覚《めざめ》です。この間私は電車が来ないために或停留場に二十分余りも立つて待つて居ましたが、丁度|祭日《
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