なりまして私が死んだ跡《あと》のあなたはどうしてもあの方《かた》の物にならなければならない、私の子を世話して下さる人はあの方《かた》よりないと云ふことがはつきりと、余りにはつきりと私に思はれて来ました。自分の死後の日を見廻す中にも、私は傷《いた》ましくてその絵の掛つた方《はう》は凝視することが出来ません。私は冷く静かな心になつて居ると思つて居ながら、あなたの苦痛のためにはこれ程の悲しみを感じるのかと自《みづか》ら呆れます。あの方《かた》はあなたの初恋の方《かた》で、然《しかtも何年か御一緒にお暮しになつた方《かた》で、あなたのためにその後《のち》の十七八年を今日《けふ》まで独居しておいでになる方《かた》であつても、悲しいことにはあなたよりもつとお年上なのでせう。去年あの方《かた》のお国から出ておいでになつた岩城《いはき》さんが、私等夫婦をもすこし開《あ》け広げな間柄であらうとお思ひになつて、あの方《かた》のことをいろ/\とお話しになつた時に、年は自分よりも確か二つ三つ上だと云つておいでになりました。岩城《いはき》さんはあなたよりまた二つ三つ上なのでせう、であつて見ればあの方《かた》の髪
前へ
次へ
全33ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング