『新新訳源氏物語』あとがき
与謝野晶子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)燦然《さんぜん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)最愛の夫人|紫《むらさき》の上
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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燦然《さんぜん》と千古《せんこ》に光る東洋文学の巨篇《きょへん》源氏物語の価値は今さら説く必要もない。
私は今を去る二十八年の昔、金尾文淵堂主の依頼によって、源氏物語を略述《りゃくじゅつ》した。新訳源氏物語がそれである。森林太郎《もりりんたろう》、上田敏《うえだびん》二博士の序文と、中沢弘光《なかざわひろみつ》画伯の絵が添っていた。その三先生に対して粗雑な解と訳文をした罪を爾来《じらい》二十幾年の間私は恥じつづけて来た。いつかは三先輩に対する謝意に代えて完全なものに書き変えたいと願っていたのであるが実現は困難であった。今から七年前の秋、どんなにもして時を作り、源氏を改訳する責《せ》めを果そうと急に思い立つ期《とき》が来た。そしてすぐに書きはじめ書きつづけ、少い余命の終らぬ間を急いだ。とこ
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