るものでなく、また或物は、女子特有のものでなくて、人間全体に一貫して備っている人間性そのものであることが明白になりました。
人間性の内容は愛と、優雅と、つつましやかさ[#「つつましやかさ」に傍点]とに限らず、創造力と、鑑賞力と、なおその他の重要な文化能力をも含んでいます。そうしてこの人間性は何人《なんぴと》にも備っているのですが、これを出来るだけ円満に引出すものは教育と労働です。そのためには、一般の人間に高等教育を受けることの自由と、併せてあらゆる職業の中から、自己に適した職業を選んだ労働に就くことの自由とを享有せしめねばなりません。
しかるに、論者が、女子に対して高等教育を拒み、労働区域の制限を固守しようとするのは、全く理由のないことだと思います。男子においては人間性の啓発となる教育と労働とが、女子においては反対に「人間らしさ」を失わしめる結果になろうとは考えられないことです。
論者はこれに対して、現在の女教師や、女学生や、女流文人や、職業婦人やに共通する半可通的な、軽佻な、生意気な、あるいは粗野な習気を挙げて、その自説を弁護しようとするかも知れませんが、私は、かえってそれこそ
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