を以て、それぞれ国民の尊敬を受けています。また現在の世界には、女子の代議士、知事、市長、学者、芸術家、社会改良家、教師、評論家、新聞雑誌記者、飛行家、運転手、車掌、官公吏、事務員等があって、従来は男子の領域であるとされていた活動に多数の女子が従事しています。殊に最近の世界大戦には、英国の軍需省附属の工場だけでも二百万の女子が家庭を離れて、戦時のあらゆる勤務に服し、戦場で用いられた弾丸の九分までを女子の手で製造するような空前の活動を示して、平和克復の日に軍需大臣が議会において女子に対する感謝演説を試みた中に、「英国が勝利を得た原因の半は女子にあることを拒むことが出来ない」と述べたほどでした。
 して見ると、男子のする事を女子もするからといって、「女らしさ」を失うという批難は当らないことになります。もし男女の性別に由って歴史的に定まった分業の領域が永久に封鎖されているものなら、男子が裁縫師となり、料理人となり、洗濯業者となり、紡績工となることは、女子の領域を侵すものとして、「男子の中性化」が論じられなければならないはずです。「女のする日記というもの」を書いた紀貫之《きのつらゆき》も、同じ理
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