MENSURA ZOILI
芥川龍之介
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)吾妻橋《あずまばし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正五年十一月二十三日)
−−
僕は、船のサルーンのまん中に、テーブルをへだてて、妙な男と向いあっている。――
待ってくれ給え。その船のサルーンと云うのも、実はあまり確かでない。部屋の具合とか窓の外の海とか云うもので、やっとそう云う推定を下《くだ》しては見たものの、事によると、もっと平凡な場所かも知れないと云う懸念《けねん》がある。いや、やっぱり船のサルーンかな。それでなくては、こう揺れる筈がない。僕は木下杢太郎《きのしたもくたろう》君ではないから、何サンチメートルくらいな割合で、揺れるのかわからないが、揺れる事は、確かに揺れる。嘘だと思ったら、窓の外の水平線が、上ったり下ったりするのを、見るがいい。空が曇っているから、海は煮《にえ》切らない緑青色《ろくしょういろ》を、どこまでも拡げているが、それと灰色の雲との一つになる所が、窓枠の円形を、さっきから色々な弦《げん》に、切っ
次へ
全10ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング