饒舌
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)始皇帝《しくわうてい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)この間|博浪沙《はくらうしや》で

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「均のつくり」、第3水準1−14−75]《にほひ》
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 始皇帝《しくわうてい》がどう思つたか、本を皆焼いてしまつたので、神田《かんだ》の古本屋《ふるぼんや》が職を失つたと新聞に出てゐるから、ひどい事をしたもんだと思つて、その本の焼けあとを見に丸《まる》ノ内《うち》へ行《ゆ》かうとすると、銀座《ぎんざ》尾張町《をはりちやう》の四《よ》つ角《かど》で、交番の前に人が山のやうにたかつてゐる。そこで後《うしろ》から背のびをして覗《のぞ》いて見ると、支那人《シナじん》の婆《ばあ》さんが一人《ひとり》巡査の前でおいおい云ひながら泣いてゐた。尤《もつと》も支那人と云つても、今の支那人ではない。平福百穂《ひらふくひやくすゐ》さんの予譲《よじやう》の画からぬけ出した
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