露譯短篇集の序
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)草花《くさばな》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「姉」の正字、「※[#第3水準1−85−57]」の「木」に代えて「女」、374−10]妹
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わたしの作品がロシア語に飜譯されると云ふことは勿論甚だ愉快です。近代の外國文藝中、ロシア文藝ほど日本の作家に、――と云ふよりも寧ろ日本の讀書階級に影響を與へたものはありません。日本の古典を知らない青年さへトルストイやドストエフスキイやトゥルゲネフやチェホフの作品は知つてゐるのです。我々日本人がロシアに親しいことはこれだけでも明らかになることでせう。のみならずわたし自身の考へによれば、ロシアが生んだ近代の政治的天才、レニンのことを考へても、所謂 Europe がレニンを理解しなかつたのは餘りにレニンが東洋的な政治的天才だつた爲かも知れません。最も理想に燃え上つたと共に最も現實を知つてゐたレニンは日本が生んだ政治的天才たち、源頼朝や徳川家康
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