て、中門《ちゅうもん》を打って出た侍たちに、やはり手痛い逆撃《さかう》ちをくらわせられた。たかが青侍の腕だてと思い侮っていた先手《せんて》の何人かも、算を乱しながら、背《そびら》を見せる――中でも、臆病《おくびょう》な猪熊《いのくま》の爺《おじ》は、たれよりも先に逃げかかったが、どうした拍子か、方角を誤って、太刀《たち》をぬきつれた侍たちのただ中へ、はいるともなく、はいってしまった。酒肥《さかぶと》りした体格と言い、物々しく鉾《ほこ》をひっさげた様子と言い、ひとかど手なみのすぐれたものと、思われでもしたのであろう。侍たちは、彼を見ると、互いに目くばせをかわしながら、二人三人、鋒《きっさき》をそろえたまま、じりじり前後から、つめよせて来た。
「はやるまいぞ。わしはこの殿の家人《けにん》じゃ。」
 猪熊《いのくま》の爺《おじ》は、苦しまぎれにあわただしくこう叫んだ。
「うそをつけ。――おのれにたばかれるような阿呆《あほう》と思うか。――往生ぎわの悪いおやじじゃ。」
 侍たちは、口々にののしりながら、早くも太刀《たち》を打ちかけようとする。もうこうなっては、逃げようとしても逃げられない。猪熊
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