陥れられてしまったのでしょう。うす暗い裸蝋燭の火がまたたく中に、大小さまざまの黒い蝶が、数限りもなく円を描いて、さっと天井へ舞上ったと思うと、そのまま目の前の鏡が見えなくなって、いつもの通り死人も同様な眠に沈んでしまいました。
お敏は雷鳴と雨声との中に、眼にも唇にも懸命の色を漲《みなぎ》らせて、こう一部始終を語り終りました。さっきから熱心に耳を傾けていた泰さんと新蔵とは、この時云い合せたように吐息《といき》をして、ちらりと視線を交せましたが、兼て計画の失敗は覚悟していても、一々その仔細《しさい》を聞いて見ると、今度こそすべてが画餅《がへい》に帰したと云う、今更らしい絶望の威力を痛切に感じたからでしょう。しばらくは二人とも唖《おし》のように口を噤《つぐ》んだまま、天を覆して降る豪雨の音を茫然とただ聞いていました。が、その内に泰さんは勇気を振い起したと見えて、今まで興奮し切っていた反動か、見る見る陰鬱になり出したお敏に向って、「その間の事は何一つまるで覚えていないのですか。」と、励ますように尋ねたそうです。と、お敏は眼を伏せて、「ええ、何も――」と答えましたが、すぐにまた哀訴するような眼
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