なざしを恐る恐る泰さんの顔へ挙げて、「やっと正気になりました時には、もう夜が明けて居りましたんです。」と、怨《うら》めしそうにつけ加えると、急に袂《たもと》を顔へ当てて、忍び泣きに咽《むせ》び入りました。そう云う内にも外の天気は、まだ晴れ間も見えないばかりか、雷は今にも落ちかかるかと思うほど、殷々《いんいん》と頭上に轟き渡って、その度に瞳を焼くような電光が、しっきりなく蓆屋根《むしろやね》の下へも閃《ひらめ》いて来ます。すると今まで身動きもしなかった新蔵が、何と思ったか突然立ち上ると、凄じく血相《けっそう》を変えたまま、荒れ狂う雨と稲妻との中へ、出て行きそうにするじゃありませんか。しかもその手には、いつの間にか、石切りが忘れて行ったらしい鑿《のみ》を提《さ》げているのです。これを見た泰さんは、蛇の目をそこへ抛り出すが早いか、やにわに後から追いすがって、抱くように新蔵の肩を抑えました。「おい、気でも違ったのか。」――思わずこう泰さんは怒鳴りつけながら、無理に相手を引き戻そうとすると、新蔵は別人のように上ずった声で、「離してくれ給え。もうこうなりゃ、僕が死ぬか、あの婆を殺すかよりほかはない
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