い事にきめていたのです。ところが例の裸蝋燭の光を受けて、小さいながら爛々《らんらん》と輝いた鏡の面を見つめていると、いくら気を確かに持とうと思っていても、自然と心が恍惚《こうこつ》として、いつとなく我を忘れそうな危険に脅《おびやか》され始めました。そうかと云って、あの婆は、呪文を唱える暇もぬかりなく、じっとこちらの顔色を窺いすましているのですから、隙《すき》を狙《ねら》って鏡から眼を離すと云う訣《わけ》にも行きません。その内に鏡はお敏の視線を吸いよせるように、益々怪しげな光を放って、一寸ずつ、一分ずつ、宿命よりも気味悪く、だんだんこちらへ近づいて来ました。おまけにあの青んぶくれの婆が、絶え間なく呟く呪文の声も、まるで目に見えない蜘蛛《くも》の巣《す》のように、四方からお敏の心を搦《から》んで、いつか夢とも現《うつつ》ともわからない境へ引きずりこもうとするのです。それがどのくらいかかったか、お敏自身も後になって考えたのでは、朧《おぼろ》げな記憶さえ残っていません。が、ともかくも自分には一晩中とも思われるほど、長い長い間続いた後で、とうとうお敏は苦心の甲斐もなく、あの婆の秘法の穽《あな》に
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