っきり分るまでは、いくら君に恨《うら》まれても、一切僕の胸一つにおさめて置きたいと思うんだ。」と、諭《さと》したり慰めたりしてくれました。が、新蔵はそう聞いた所で、泰さんの云う事には得心出来ても、お敏の安否を気使う心に変りのある筈はありませんから、まだ険しい表情を眉の間に残したまま、「それにしても君、お敏の体に間違いのあるような事はないだろうね。」と、突っかかるように念を押すと、泰さんもやはり心配そうな眼つきをして、「さあ。」と云ったぎり、しばらくは思案《しあん》に沈んでいましたが、やがてちょいと次の間の柱時計を覗《のぞ》きながら、「僕もそれが気になって仕方がないんだ。じゃあの婆の家へは行かないでも、近所まで偵察《ていさつ》に行って見ようか。」と、思い切ったらしく云うのです。新蔵も実は悠長にこうして坐りこんでいるのが、気が気でなかった所ですから、勿論いやと言う筈はありません。そこですぐに相談が纏《まとま》って、ものの五分と経たない内に、二人は夏羽織の肩を並べながら、※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]々《そうそう》泰さんの家を出ました。
 所が泰さんの家を出て、まだ半町と行かない
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