竜
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)宇治《うじ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ある日一天|俄《にわか》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+丑」、第4水準2−12−93]
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一
宇治《うじ》の大納言隆国《だいなごんたかくに》「やれ、やれ、昼寝の夢が覚めて見れば、今日はまた一段と暑いようじゃ。あの松《まつ》ヶ枝《え》の藤《ふじ》の花さえ、ゆさりとさせるほどの風も吹かぬ。いつもは涼しゅう聞える泉の音も、どうやら油蝉の声にまぎれて、反《かえ》って暑苦しゅうなってしもうた。どれ、また童部《わらんべ》たちに煽《あお》いででも貰おうか。
「何、往来のものどもが集った? ではそちらへ参ると致そう。童部《わらんべ》たちもその大団扇《おおうちわ》を忘れずに後からかついで参れ。
「やあ、皆のもの、予が隆国《たかくに》じゃ。大肌ぬぎの無礼は赦《ゆる》してくれい。
「さて今日はその方どもにちと頼み
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