云う事を知った始《はじめ》である。
 次いで、四代目の「新思潮」が久米、松岡、菊池、成瀬、自分の五人の手で、発刊された。そうして、その初号に載った「鼻」を、夏目先生に、手紙で褒めて頂いた。これが、自分の小説を友人以外の人に批評された、そうして又同時に、褒めて貰《もら》った始めである。
 爾来《じらい》程なく、鈴木三重吉氏の推薦によって、「芋粥《いもがゆ》」を「新小説」に発表したが、「新思潮」以外の雑誌に寄稿したのは、寧《むし》ろ「希望」に掲げられた、「虱《しらみ》」を以《もっ》て始めとするのである。
 自分が、以上の事をこの集の後に記したのは、これらの作品を書いた時の自分を幾分でも自分に記念したかったからに外ならない。自分の創作に対する所見、態度の如《ごと》きは、自《おのずか》ら他に発表する機会があるであろう。唯《ただ》、自分は近来ます/\自分らしい道を、自分らしく歩くことによってのみ、多少なりとも成長し得る事を感じている。従って、屡々《しばしば》自分の頂戴《ちょうだい》する新理智派《しんりちは》と云い、新技巧派と云う名称の如きは、何《いず》れも自分にとっては寧《むし》ろ迷惑な貼札《は
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