芥川龍之介
羅生門の後に
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)貉《むじな》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ます/\自分らしい道を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]芥川龍之介
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この集にはいっている短篇は、「羅生門」「貉《むじな》」「忠義」を除いて、大抵過去一年間――数え年にして、自分が廿五歳の時に書いたものである。そうして半《なかば》は、自分たちが経営している雑誌「新思潮」に、一度掲載されたものである。
この期間の自分は、東京帝国文科大学の怠惰なる学生であった。講義は一週間に六七時間しか、聴きに行かない。試験は何時《いつ》も、甚《はなは》だ曖昧《あいまい》な答案を書いて通過する、卒業論文の如《ごと》きは、一週間で怱忙《そうぼう》の中に作成した。その自分がこれらの余戯《よぎ》に耽《ふけ》り乍《なが》ら、とにかく卒業する事の出来たのは、一に同大学諸教授の雅量に負う所が少くない。唯《ただ》偏狭なる自分が衷心から其《その》雅量に感謝する事の出来ないのは、遺憾である。
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