僕の友だち二三人
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)小穴隆一《をあなりゆういち》君
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)又|発句《ほつく》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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小穴隆一《をあなりゆういち》君(特に「君」の字をつけるのも可笑《をか》しい位である)は僕よりも年少である。が、小穴君の仕事は凡庸《ぼんよう》ではない。若し僕の名も残るとすれば、僕の作品の作者としてよりも小穴君の装幀《さうてい》した本の作者として残るであらう。これは小穴君に媚《こ》びるのではない。世間にへり下《くだ》つて見せるのではなほ更ない。造形美術と文芸との相違を勘定《かんぢやう》に入れて言ふのである。(文芸などと云ふものは、――殊に小説などと云ふものは三百年ばかりたつた後《のち》は滅多《めつた》に通用するものではない。)しかし大地震か大火事かの為に小穴君の画も焼けてしまへば、今度は或は小穴君の名も僕との腐《くさ》れ縁《えん》の為に残るであらう。
小穴君は神経質に徹してゐる。
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