夢
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)頸《くび》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)谷中|三崎町《さんさきちよう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「均のつくり」、第3水準1-14-75]
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わたしはすっかり疲れていた。肩や頸《くび》の凝《こ》るのは勿論、不眠症もかなり甚しかった。のみならず偶々《たまたま》眠ったと思うと、いろいろの夢を見勝ちだった。いつか誰かは「色彩のある夢は不健全な証拠だ」と話していた。が、わたしの見る夢は画家と云う職業も手伝うのか、大抵《たいてい》色彩のないことはなかった。わたしはある友だちと一しょにある場末《ばすえ》のカッフェらしい硝子戸《ガラスど》の中《なか》へはいって行った。そのまた埃《ほこり》じみた硝子戸の外はちょうど柳の新芽をふいた汽車の踏み切りになっていた。わたしたちは隅のテエブルに坐り、何か椀《わん》に入れた料理を食った。が、食ってしまって見ると、椀の底に残っているのは一
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