ろじろ見比べて、
「君が僕たちと骨牌《かるた》をしないのは、つまりその金貨を僕たちに取られたくないと思うからだろう。それなら魔術を使うために、欲心を捨てたとか何とかいう、折角《せっかく》の君の決心も怪しくなってくる訳じゃないか。」
「いや、何も僕は、この金貨が惜しいから石炭にするのじゃない。」
「それなら骨牌《かるた》をやり給えな。」
何度もこういう押問答を繰返した後で、とうとう私はその友人の言葉通り、テエブルの上の金貨を元手《もとで》に、どうしても骨牌《かるた》を闘わせなければならない羽目《はめ》に立ち至りました。勿論友人たちは皆大喜びで、すぐにトランプを一組取り寄せると、部屋の片隅にある骨牌机《かるたづくえ》を囲みながら、まだためらい勝ちな私を早く早くと急《せ》き立てるのです。
ですから私も仕方がなく、しばらくの間は友人たちを相手に、嫌々《いやいや》骨牌《かるた》をしていました。が、どういうものか、その夜に限って、ふだんは格別|骨牌《かるた》上手でもない私が、嘘のようにどんどん勝つのです。するとまた妙なもので、始は気のりもしなかったのが、だんだん面白くなり始めて、ものの十分とた
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