本の事
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)洋綴《やうとぢ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)警視庁警視|属《ぞく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十年十二月)

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)所々《しよ/\》の
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     各国演劇史

 僕は本が好きだから、本の事を少し書かう。僕の持つてゐる洋綴《やうとぢ》の本に、妙な演劇史が一冊ある。この本は明治十七年一月十六日の出版である。著者は東京府士族、警視庁警視|属《ぞく》、永井徹《ながゐてつ》と云ふ人である。最初の頁《ペエジ》にある所蔵印を見ると、嘗《かつて》は石川一口《いしかはいつこう》の蔵書だつたらしい。序文に、「夫《それ》演劇は国家の活歴史にして、文盲《もんまう》の早学問なり。故に欧洲進化の国に在《あり》ては、縉紳《しんしん》貴族皆之を尊重す。而《しかう》してその隆盛《りうせい》に至りし所以《ゆゑん》のものは、有名の学士|羅希《らき》に出《いで》て、之れが改良を謀《は
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