不思議な島
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)籐《とう》の長椅子《ながいす》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)新聞が一枚|抛《ほう》り出してある
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十二年十二月)
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僕は籐《とう》の長椅子《ながいす》にぼんやり横になっている。目の前に欄干《らんかん》のあるところをみると、どうも船の甲板《かんぱん》らしい。欄干の向うには灰色の浪《なみ》に飛び魚か何か閃《ひらめ》いている。が、何のために船へ乗ったか、不思議にもそれは覚えていない。つれがあるのか、一人なのか、その辺《へん》も同じように曖昧《あいまい》である。
曖昧と云えば浪の向うも靄《もや》のおりているせいか、甚だ曖昧を極めている。僕は長椅子に寝ころんだまま、その朦朧《もうろう》と煙《けぶ》った奥に何があるのか見たいと思った。すると念力《ねんりき》の通じたように、見る見る島の影が浮び出した。中央に一座の山の聳えた、円錐《えんすい》に近い島の影である。しかし大体の輪郭《りんかく》のほかは
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