病中雑記
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)間《かん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)神経性|狭心症《けふしんしやう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十五年二月―三月)
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一 毎年一二月の間《かん》になれば、胃を損じ、腸を害し、更に神経性|狭心症《けふしんしやう》に罹《かか》り、鬱々として日を暮らすこと多し。今年《ことし》も亦《また》その例に洩《も》れず。ぼんやり置炬燵《おきごたつ》に当りをれば、気違ひになる前の心もちはかかるものかとさへ思ふことあり。
二 僕の神経衰弱の最も甚《はなはだ》しかりしは大正十年の年末なり。その時には眠りに入らんとすれば、忽ち誰かに名前を呼ばるる心ちし、飛び起きたることも少からず。又古き活動写真を見る如く、黄色き光の断片目の前に現れ、「おや」と思ひしことも度たびあり。十一年の正月、ふと僕に会ひて「死相《しさう》がある」と言ひし人ありしが、まことにそんな顔をしてをりしなるべし。
三 「墨汁一滴《ぼくじふいつてき》」や「病牀《
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