芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)部屋《へや》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四十|格好《がつこう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]
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        一

 部屋《へや》の隅に据えた姿見《すがたみ》には、西洋風に壁を塗った、しかも日本風の畳がある、――上海《シャンハイ》特有の旅館の二階が、一部分はっきり映《うつ》っている。まずつきあたりに空色の壁、それから真新しい何畳《なんじょう》かの畳《たたみ》、最後にこちらへ後《うしろ》を見せた、西洋髪《せいようがみ》の女が一人、――それが皆冷やかな光の中に、切ないほどはっきり映っている。女はそこにさっきから、縫物《ぬいもの》か何かしているらしい。
 もっとも後は向いたと云う条、地味《じみ》な銘仙《めいせん》の羽織の肩には、崩《くず》れかかった前髪《まえがみ》のはずれに、蒼白い横顔が少し見える。勿論肉の薄い耳に、ほんのり光が
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