僻見
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)好悪《かうを》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)正月|元会《ぐわんゑ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「石+(くさかんむり/溥)」、第3水準1−89−18]
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 この数篇の文章は何人かの人々を論じたものである。いや、それらの人々に対する僕の好悪《かうを》を示したものである。
 この数篇の文章の中に千古の鉄案を求めるのは勿論《もちろん》甚だ危険である。僕は少しも僕の批判の公平を誇らうとは思つてゐない。実際又公平なるものは生憎《あいにく》僕には恵まれてゐない、――と云ふよりも寧《むし》ろ恵まれることを潔《いさぎよ》しとしない美徳である。
 この数篇の文章の中に謙譲の精神を求めるのはやはり甚だしい見当違ひである。あらゆる批判の芸術は謙譲の精神と両立しない。就中《なかんづく》僕の文章は自負と虚栄心との吸ひ上げポンプである。
 この数篇の文章の中に軽佻《
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