文芸鑑賞講座
芥川龍之介

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)了《をは》る

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)只|頗《すこぶ》る

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「口+卒」、第3水準1−15−7]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)そろ/\完結に近づいた
−−

 文芸上の作品を鑑賞する為には文芸的素質がなければなりません。文芸的素質のない人は如何なる傑作に親んでも、如何なる良師に従つても、やはり常に鑑賞上の盲人に了《をは》る外はないのであります。文芸と美術との相違はありますが、書画骨董を愛する富豪などにかう云ふ例の多いことは誰でも知つてゐる事実でありませう。しかし文芸的素質の有無と云ふことも程度によりけりでありますから、テエブルや椅子の有無のやうに判然ときめる訳には行かないのであります。たとへばわたし自身などはゲエテとかシエクスピイアと云ふ文豪なるものに比べれば、文芸的素質はないと言つて
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